茅野市北山の湯川という集落の上に杜鵑峡という景勝地があります。その景勝地を抜けるとビーナスラインに突き当たたります。突き当たったところから蓼科温泉郷に入るわけですが、沿道沿いに古木のサクラ並木がプール平まで約2キロほど続く。50年以上の古木なのでいまでは多くが老齢化してしまっていますが、昭和30~40年代には「千本桜」と呼ばれ、地域に人たちに愛されていました。
いま、「千本桜」が小さな花を咲かせています。花と葉が一緒になって懸命に咲いている姿から、おそらく、タカネザクラと思われます。
「千本桜」は、西川義方(1880~1968年)という日本を代表する医師が植えたものです。和歌山県出身の内科医。東京帝国大学医学部を卒業し、日本医学専門学校教授、東京医科大学教授を務め、1919円宮内庁の侍医として大正天皇を診ました。著書「内科診療の実際」はロングセラーとなり、温泉に関する随筆をたくさん出版しました。
西川は日本各地の温泉を巡り、中でも蓼科の気候、風土、温泉を愛し、「蓼科の温泉は健康に適している」として、昭和初年に別荘を蓼科にかまえました。毎夏には蓼科を訪れ、自然の中の散策と温泉を堪能していたそうです。
「千本桜」のことも、西川のこともいまでは知る人は少なくなりましたが、蓼科温泉郷のタカネザクラの並木を私は《西川ザクラ》と呼んでいます。
